「生活支援」に「認知症サポート」千代田区が民間とタッグ

2022.09.02

高齢者に優しい街づくりを進めようと、東京都千代田区は1日、携帯電話関連のシステム開発に強みを持つ「クォンタムジャンプ」(同区)と生活支援サービス実施に関する協定を結んだ。あわせて認知症当事者らを支援する2社を「認知症サポート企業」として認証し、3社と今後の取り組みについて意見を交わした。樋口高顕(たかあき)区長は「企業や大学が多い区の強みを生かし、高齢者を見守る取り組みで連携を進めていきたい」と語った。(中村雅和)

クォンタムジャンプ社は今月以降、区の施設で、スマートフォンを使ったことがない高齢者向けに機能などを紹介し、使いこなせるようサポートする講座を計6回催す。区は民間のノウハウを生かし、住民目線のニーズに応じた事業となることを期待。同社にとっても、今後の開発で、現場の生の声に触れられるメリットがあるという。

「認知症サポート企業」の認証はセブン&アイ・フードシステムズと、区内のカフェ「のん散歩」の2社が受けた。

セブン&アイ・フードシステムズは、千代田区が開催している認知症当事者や家族らが集まり悩みなどを話し合う集い「実桜(みお)の会」の会場として、運営するファミリーレストラン「デニーズ」を提供。「のん散歩」は、店主の藤原のり子さんが昨年の開店以来、自身の介護経験などを踏まえた来店客の悩みへのアドバイスが評判で、9月には「実桜の会」も開かれる。

千代田区は人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は16・7%(令和4年8月1日現在確定値)と全国平均の29%(同概算値)に比べ低い。「職住近接」を求める現役世代の転入などが寄与しているとみられ、割合上は高齢者の少ない都市だ。一方で、区内の高齢者のみの世帯数は平成22年の4658世帯から6253世帯(同確定値)と約3割も増加している。今後もこの傾向は続くとみられ、高齢者向けの施策拡充が区の課題だった。

政府が旗をふる行政のデジタル化の下、スマートフォンやパソコンでの手続きの一般化が進む中、一定の対面窓口の維持に加え、操作方法の案内などは高齢者のニーズが高いとされる。

また、認知症は厚生労働省の推計で、令和7年に高齢者の5人に1人が診断を受けると見込まれる「国民病」となっている。当事者だけでなく、介護や支援を担う同居家族への負担は大きく、当事者と社会の接点を設ける事業に注目が集まっている。

樋口氏はサポート企業2社の代表を前に「孤立をどう取り除くかが大きなテーマ。認知症に優しい街づくりを一緒に進めていきたい」と呼びかけた。