薬の知識ある夫婦に何が メタノール飲ませ殺害容疑

2022.09.16

 製薬大手「第一三共」(東京都中央区)の研究員が妻を殺害したとして警視庁捜査1課に逮捕された。2人は元同僚で、薬の知識がお互いにあったとみられる。エリート夫婦に何があったのか。

 捜査関係者などによると、殺人容疑で逮捕された吉田佳右容疑者(40)は北海道大大学院を修了後、2007年に第一三共に研究員として入社。妻容子さん(当時40歳)も京都大大学院修了後、同社に入った。2人は同期だった。

 10年に結婚した後、容子さんは同社を退職。事件当時は小学生の長男と3人暮らしだった。経済的に不自由はなかったとみられるが、吉田容疑者は「夫婦仲は悪かった」と同課に説明しているという。吉田容疑者は容子さんの死後、出勤していなかった。

 同課は当初、自殺の可能性も探ったが、容子さんの携帯電話などを解析した結果、子どもの塾について調べたり、本を予約したりと今後の予定を立てていたことが判明した。第一三共を退職後に就いた仕事も順調だったという。そのため、自らメタノールを摂取する動機がないだけでなく、薬学の知識がある容子さんがメタノールを誤飲する可能性も低いと同課は判断。何者かに摂取させられたとみて捜査を進めていた。一方、自宅マンションの出入り状況などから吉田容疑者以外の第三者が関与した可能性はないとみて、逮捕に踏み切った。

 第一三共は「社員が逮捕されたことを大変重く受け止めており、警察の捜査に全面的に協力し、事実関係を確認した上で、厳正に対処する」とのコメントを出した。【鈴木拓也、木原真希、岩崎歩】