パトリオット、効果に疑問も ウクライナに供与の米主力防空システム
2022.12.23
【ワシントン時事】米国がウクライナに供与する地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」は、米軍の主力防空システムとして知られる。
ウクライナは最新の防空能力を備えることになり、ロシアによる電力施設などを狙ったミサイル攻撃からの防衛が期待されている。ただ今回供与されるのは1基で、専門家からは効果は限定的との声もある。
「ロシアの侵略から自国を守るために、ウクライナにとって重要な資産となるだろう」。バイデン米大統領は21日の記者会見で意義を強調した。ウクライナのゼレンスキー大統領も「われわれの防空態勢を大幅に強化するものだ。電力施設や国民、インフラへの攻撃を防ぐ唯一の手段だ」とこれを歓迎した。
米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、パトリオットはこれまで、日本や台湾、イスラエル、ドイツなど18カ国・地域で運用されている。迎撃ミサイル1発当たり約410万ドル(約5億4000万円)のコストがかかるという。
パトリオットは1991年の湾岸戦争で初めて実戦投入され、その後も改良が重ねられている。迎撃ミサイルや発射台、レーダー、指揮統制装置などで構成され、運用には約90人の人手が必要となる。
一方、約40~約160キロに射程が限られることなどを理由に、CSISは「ウクライナ全土に防御網を張り巡らせることはできない。(戦局を変える)ゲームチェンジャーにはならない」との見方を示す。1機当たり約5万ドル(約660万円)のイラン製無人機、1発当たり約25万ドル(約3300万円)のロシア製巡航ミサイルの迎撃で使うには高価すぎるとも指摘している。
とはいえ、ウクライナ支援を明確にする政治的な意義はありそうだ。ロシアのメドベージェフ前大統領は11月下旬、「北大西洋条約機構(NATO)がウクライナにパトリオットを提供すれば、直ちにわが軍の格好の標的になる」と警戒していた。

