ベッキーはいつから怪演俳優に? 『赤いナースコール』でも際立つミステリアスな演技

2022.08.01

 いま、ベッキーと聞いてどんなイメージを思い浮かべるだろうか。少なくともかつてのバラエティにひっぱりだこだった頃のイメージのままという人は少ないはずだ。

 『おはスタ』(テレビ東京系)の中で英語コーナーを担当する“おはガール”だったベッキー。『おはスタ』卒業後も優等生キャラ、司会が上手いタレントとして、お茶の間人気があっただけに、2016年のある騒動の影響は強く、司会業からは退く形となった。

 逃げ出すこともできたはずだ。しかしベッキーは、芸能界に再び戻った。それが例えいばらの道だったとしてもその道を選んだのだ。

  そんなアウェー感、マイナスからの再スタートがベッキーを強くした。そこで見つけた「俳優」という道を進み続けている。

  その覚悟というのは、近年の出演作品の中でみせる演技からも伝わってくる。かつての『怪物くん 完全新作スペシャル!!』(日本テレビ系)や『エイトレンジャー』(2012年)などに出演した際の、タレントがドラマや映画に“顔出し”をしているような印象ではなく、明からに何かが吹っ切れたようでもあり、俳優として進む覚悟すら感じられるほどに、深みのある演技になってきているのだ。

 復帰後に出演した映画『初恋』(2020年)やドラマ『くノ一忍法帖 蛍火』(テレビ東京系)、『悪魔の弁護人・御子柴礼司 ~贖罪の奏鳴曲~』(フジテレビ系)などでみせた演技を見ても、タレントという印象ではなく、正に俳優といった印象を強く感じる。

  特に『初恋』でみせた怪演は、単に自虐というわけではなく、何かが吹っ切れたような清々しさすらあった。それでいて冷静さを感じながらも、内に秘めた情熱を同時に感じさせる。

  母親が日本人で父親がイギリス人であることから、同様の役ばかりを求められ、役を狭められていしまっていた時期もあったかもしれないが、今では、自身のルーツを完全に長所として活かしている。シャープな表情でミステリアスな雰囲気を醸し出しているのだ。

 実際にその演技が評価されはじめていて、再びベッキーが注目を集めることになっている。

 現在放送中のドラマ『赤いナースコール』(テレビ東京系)でも、その演技が注目を集めているのも納得ができる。というのも、同作でベッキーが魅せた山根ミク役のミステリアスな演技からは、内なる狂気性や恐怖を感じるほどであり、作品自体のもつ異質感の中でスパイスとして機能しているのだ。

 逆境を利用して自虐的に向かって行ってしまい、方向性を見失い、結果的に長続きしないという俳優やタレントを何度も見てきたが、ベッキーの場合は、なぜか負の要素が感じられない。

 それに、演技の方向性とは反するかもしれないが、またバラエティやイベントの仕事が徐々に増えてきている。これはベッキーがどん底から這い上がったストイックさが、彼女の覚悟や自信を象徴するものであると世間が評価したからではないだろうか。以前とは少し違ったかたちかもしれないが、見事なまでの復活といえるだろう。

 そして、今では二児の母でもあるベッキー。お母さんになっても活躍する女性のロールモデルとしても、世間に影響力をもたらしている。

 YouTubeチャンネル「ベツキイ!!!!」や、去年立ち上げたスキンケアブランド「NaturaLUNA…」など、俳優・タレント業と並行して、マルチな活躍をみせながら、独自の道を進む。

 『赤いナースコール』の今後の展開やベッキーの演技にも注目が集まるっているが、同作では、あくまでサブキャラクターの立ち位置である。それでも圧倒的な存在感を放っている姿からは、映画やドラマで主役を張る日もそう遠い話ではないだろう。